木造阿弥陀如来坐像(九品仏(くほんぶつ)中尊)(口絵参照)

1075 ~ 1075

重文 一二世紀後半 若穂綿内 蓮台寺(れんだいじ)蔵

桂(かつら)材 寄木造 玉眼 古色塗 像高一〇六・四センチメートル

 『観無量寿経』に、阿弥陀仏の来迎には九種の別があると説かれている。九品仏はこの九種の阿弥陀仏の信仰から始まった。加賀白山の開創者として知られる僧泰澄(たいちょう)が、この九品の阿弥陀如来坐像を祀(まつ)ったことが始まりといわれている。末法思想の隆盛により平安時代後期、極楽往生を願う平安貴族たちのなかで、すすんで九品の阿弥陀仏を造顕することが流行をみた。現在、本寺に安置されている九品仏はその中尊で、中世火災に遭遇して他の八体は焼失し、近世の元禄年間(一六八八~一七〇四)に再建造立され、宝永七年(一七一〇)に常行(じょうぎょう)堂が建立された。

 本像は桂材を用いた寄木造で、ととのったこまかな螺髪(らほつ)、髪際一文字、豊かな頰張りなどで表情はややきびしい。全体に布貼り、古色塗を後補しているため、現状の面相部は大きく変化している。おそらく造立当初は穏やかな面貌であったものと推定される。全体に衣文の刻みが浅く穏やかにととのえられている点、平安時代後期の和様を典型的に示している。