木造伝観音菩薩立像

1081 ~ 1081

県宝 一〇世紀前半 安茂里大門 正覚院蔵

桂材 一木造 彫眼 素地 像高一八一・二センチメートル

 やや小振りに造られた頭部、強い肩張り、そして胸部から腹部にかけての厚い奥行きなど、堂々とした量感を示している。桂材を用いた一木から彫りだし、肩下から裳裾(もすそ)にかけて内刳(うちぐ)りをほどこし背板(欅(けやき)材ヵ)を当てる。また頰張りのゆたかな面貌、腰高の引き締まった胴部、足元を高くあらわした裳裾の表現などは、古様の構造を示しており、清水寺(松代町西条)の千手観音像と似かよった点が認められるところから、製作年代は、一〇世紀前半と推定される。平安時代の特色を示す一木彫成の古例として注目されよう。

 現状、材の干割れが各所に認められるなど、保存状態は良好とはいえない。また頭上面、両肩先、両足先、天衣遊離部(檜(ひのき)材)などは後補、光背(こうはい)、台座も後世の補作である。なお表面の彩色などはすべて剥落し、当初の仕上げは不明であり、現状は素地となっている。