信仰対象としての中世石造物

1098 ~ 1098

石造文化財といった場合、広い意味では、石仏や石塔などから、石碑・句碑のようなモニュメントや石橋といった実用の構造物など、あらゆる石造りの文化的所産がふくまれるが、中世の石造物を概観すると、大多数が石仏・石塔、つまりいずれも礼拝対象物であることがわかる。それは「信仰の時代」ともいわれる中世社会の風潮を象徴する存在であるといえる。現在の私たちが中世の建築や遺跡を見ることはたいへんまれなことだが、石塔はその気で探せば寺院や地区の信仰の場所などにたいていひとつやふたつは残っている。長野市域には、五輪塔(ごりんとう)・宝篋印塔(ほうきょういんとう)・多層塔(たそうとう)・板碑(いたび)・石幢(せきどう)・石仏などの種類がみられ、石造物は日常生活のなかで中世の文化にふれるもっとも身近な文化財ともいえるだろう。