城の見方

1117 ~ 1117

中世の城は、戦後から昭和四十年代まで為政(いせい)者(支配者)側からの視点で解釈され、戦国大名が築いた城、合戦に関係した城などに焦点があてられていた。文献史料に登場する城、大規模で特徴的な城が研究の対象であった。ところが、昭和五十年代以降は、無数に分布する城跡を地域史を解明する資料として生かす方向と方法が示され、それまで取りあげられてこなかった城も、新たに縄張(なわば)り図・考古資料・文献史料・地籍図などを用いて研究が深められるようになった。城から中世をみる視点が広まった。その結果、民衆が戦乱から避難したところと想定される「山小屋」、村(民衆)が自衛・武装した「村の城」の存在が浮きぼりにされ、中世社会における城と村(民衆)のかかわりがより明らかとなった。また各地の発掘では、地表面の観察と文献史料ではわからない地下の情報(遺構・遺物)が得られ、考古資料から集落・館(屋敷)・墓などと城のかかわりが検討されている。こんにちこのような総合的な研究により城の認識が変わりつつある。