長野市誌全一六巻には、現長野市域を中心とした原始時代から現代にいたる人びとのあゆみをまとめた歴史編六巻が計画されている。そのうちこの第二巻原始・古代・中世編は、その最初の巻にあたり、旧石器時代から戦国時代までの長野市域の歴史を具体的に記述した。
原始・古代・中世編の史料調査と編集・刊行の計画については、すべて市誌編さん委員会と市誌刊行委員会に付議してすすめられた。
平成三年(一九九一)度以降部員、調査執筆員を委嘱して原始・古代・中世史部会が発足し、編集項目とその執筆分担を決め、それにもとづいて史料調査と現地調査が本格的に始められ、専門部会による共同調査、部員各自による個別調査、市誌編さん室による調査をあわせておこなった。
編さん室と専門部会による共同調査では、はじめに原始分野が、平成五年度から飯綱高原上ゲ屋遺跡の発掘調査および分布調査、南向塚古墳の墳丘実測調査をおこなった。同時にまた、市内の個人・学校等所蔵の考古資料の悉皆(しっかい)調査をおこない、明治大学文学部考古学研究室石川日出志教授と同研究室学生によりその実測調査をおこなった。また、古代・中世分野では、『信濃史料』から、各自の執筆分担に応じて長野市域に関係する史料を抜きだし、年表と史料カードを作成する作業から始められた。『信濃史料』以後の新出史料についても史料カードを作成して、通史編の執筆に活用するとともに、平成十四年発刊予定の資料編に備えた。ついで平成六年度から市内箱清水花岡平および善光寺周辺の中世石造物群の調査、中世城館跡分布調査、荘園遺構調査、寺院所蔵の史料調査および市内条里遺構確認現地調査などを実施した。城館跡調査については関係部員が適時実施した。
この間に県外では、山形県酒田市本間美術館、新潟県十日町市立博物館をはじめ、各地の諸機関および個人所蔵の貴重な文書史料を探訪して収集した。
これら史料調査の実施にあたっては、各地区の調査協力員ほか多くの関係者の多大なご助力をいただいた。
平成九年度からは執筆分担にもとづいて原稿執筆をおこなった。原始分野は毎月、古代・中世分野は隔月に部会を開き、執筆原稿の検討・修正・執筆分担内容の調整を重ね、正確で読みやすい記述にすることにつとめた。また、調査史料や図・表および写真の史料性も生かすように工夫した。
本巻の刊行にいたるまで、調査や史料提供に快く応じてくださった史料所蔵機関・団体・個人各位をはじめ、多数の方がたに多大なご協力をいただいた。また、本書製作にあたっては、東京法令出版株式会社の積極的な協力を受けた。あわせて深く謝意を表する。
長野市誌は、平成九年十月市制施行百周年にあたって最初の四巻を、また、十年度民俗編を発刊し、本年度本巻を発刊した。以後続刊し、平成十六年度までに全一六巻を完結する予定である。この大きな修史事業の所期の目的が達せられるよう、今後ともひろく市民各位のいっそうのご理解ご協力を切にお願い申しあげるしだいである。
平成十二年(二〇〇〇)一月二十日 長野市誌編さん委員長 中村一雄