国勢調査の実施と市町村人口の推移

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大正九年(一九二〇)十月一日、第一回国勢調査が全国一斉におこなわれた。これはわが国の人口および世帯等の実態を把握して、その結果は各種施策の基礎資料を得るとともに、広く一般にも利用できることを目的にしていた。対象はその年の十月一日に日本に普段住んでいるすべての人であり、以後五年ごとにおこなわれている。長野市では、調査のために周到な準備をすすめた。国勢調査の態勢として助役を係長に、統計主任を事務主任にし、さらに各課より係員を選抜してその事務に付けることとした。全市を一〇五区の調査区に分割し、各一人の調査員をおいて見取り図および世帯調書の作成をはじめ、これに関連する事務をすすめていった(『最近十年間の長野市』)。


写真72 大正9年10月1日の第1回国勢調査記念絵はがき
(『写真にみる長野のあゆみ』より)


写真73 国勢調査宣伝歌謡集

 第一回の国勢調査の結果は、まず市町村別世帯および人口の概数を速報として発表し、つぎに市町村別確定人口を公表している。結果表の編成は、二部にわけて公表することになっていた。その一つは全国の部であり、もう一つは府県の部である。さらに府県の部は分冊として各府県ごとに報告された。こうして報告された府県の部には大きく六つの分類がされている。それは①人口、②世帯、③年齢および配偶関係、④出生地、⑤職業、⑥国籍・民籍で、そのおもな内容と結果の一部はつぎのようである。

一 人口 男女別の数を全市町村別に表記し、女性数を一〇〇として男性の割合を示している。この年の男性と女性の割合は女性一〇〇にたいし男性は一〇三・五四である。

二 世帯 普通世帯、準世帯の各種別について世帯数および世帯人員を表示している。

三 年齢および配偶関係 年齢を男女別で区切り、男性の区切りは、〇歳、一~五歳、六~一三歳、一四歳、一五~一六歳、一七~一九歳、二〇歳、二一~二四歳、二五~三九歳、四〇~五九歳、六〇歳以上である。女性の区切りは、一四歳までは男性と同じであるが、それ以後は、一五~一九歳、二〇~二四歳、二五~四四歳、四五~五九歳と六〇歳以上である。配偶関係では、未婚・有配偶・死別・離別の四つに大別されている。

四 出生地 人口を自府県生まれ、他府県生まれ、植民地生まれ、外国生まれの四つに分類している。自府県生まれをさらに自市町村生まれと他市町村生まれにわけている。また他府県生まれ、植民地生まれについてはそれぞれ府県別、植民地別に表示している。

五 職業 本業者と、本業者に従属するものおよび家事使用人にわけ、本業者は、一〇の大分類、四一の中分類、二五二の小分類にわかれている。職業上の地位により、業主、職員および労務者にわけ、各本業者に従属するものおよび家事使用人とともに性別、年齢および配偶関係に関連させて表示している。副業も調べ、本業者、本業なき従属者および家事使用人ごとにこれを示し、本業と副業とを合わせた有業数も出している。

六 国籍・民籍 ここでは、年齢、配偶関係および職業に関連させてまとめられている。

 こうしてまとめられた国勢調査により、当時の長野市の職業別人口の割合をあらわしたのが図13である。これによれば長野市では、商業・工業・公務自由業・交通業・農業の順になっており、とくに商業・工業に従事するものが多いことがいえる。また、県都として公務に従事するものも多いことがわかる。しかし、農業については四・六パーセントと、松本市(七パーセント)や上田市(一五パーセント)にくらべてかなり低いことも長野市の特徴といえる。また、男女別については、女性の一位は商業で三五・二パーセント(男性三三・五パーセント)、二位は工業で二三パーセント(同二五・九パーセント)、公務・自由業が三位で一七パーセント(同一四・七パーセント)、農業従事者は四・七パーセント(同四・四パーセント)とあまり違いがない。無職のものは女性で七・三パーセント、男性で八・六パーセントであるが、無職の分類を見ると八つにわかれ、小作料によるもの、地代家賃有価証券の収入によるもの、恩給年金その他の収入によるもの、準世帯にある学生生徒、精神病院・感化院・慈善病院等にあるもの、官公または慈善団体等の救助を受けるもの、在監人、その他の無職者となっているので、必ずしも無収入のものではない。


図13 職業別の割合(大正9年)
(大正9年『国勢調査統計』により作成)

 こうして確定された人口統計により、その後の長野市の世帯数や人口(図14)を見ると、大きく変化したのは大正十二年である。これは、この年吉田町・芹田村・古牧村・三輪村が長野市に編入合併したことによるものである。昭和に入ると、昭和十年(一九三五)の七万七三二五人を最高にやや減少してくるが、終戦の昭和二十年には八万九三五七人と増加している。


図14 人口と世帯数の変化
(『長野市統計書』、『国勢調査報告 長野県』により作成)