昭和二十六年(一九五一)四月長野市では、戦争による肉親との離別や家族制度の変革などにより生活に困難をきたす老齢者が増加しつつある状況に対応して、市内上松地区に養老施設の設置の構想をたてた。翌二十七年十一月、この計画に上水内郡町村会から参加の申し出があり、地方自治法の規定によって一市三町六ヵ村による長水養老院組合が設立され、長野県知事より生活保護法による保護施設として認可された。二十八年度中には収容棟三棟の第一期工事と、本館・食堂・浴場の第二期工事が完了した。
創立時の入所者は二一人、職員五人(書記二、寮母一、炊事婦一、公仕一)であった。二十八年度には嘱託医師一人、常勤看護婦二人からなる松寿荘診療所が開設され、一般病床一三床が整備されて使用が可能になった。三十年代から五十年代にかけて収容人員はしだいに増加し、五十三年には七〇人となって施設も手ぜまとなった。そこで、五十三年に松寿荘の全面改築に着手し、翌五十四年四月に居住棟が完工した。
改築後の昭和五十五年(一九八〇)四月一日からは、松寿荘の経営主体を長野地域広域行政組合に合併統合し、入所定員養護老人ホーム一〇〇人、特別養護老人ホーム一二〇人の併設施設として再発足した。この時の入所者数は養護老人一〇〇人・特別養護老人三九人であった。
長野市では昭和四十五年以来、老人福祉の増進のために市社会福祉協議会が運営主体となって、定員一〇〇人の老人憩の家を市内一〇ヵ所に開設した。サービスの内容は入浴・休憩・娯楽である。どこの施設も満員の盛況で、多くの高齢者に親しまれた。施設の概要は表9のようである。
昭和三十四年一月一日に新国民健康保険法が施行された。施行以後の国民健康保険の歩みの中で、長野市が実施した高齢者にたいする福祉上の措置の内容を年次をおって示すとつぎのようである。
昭和四十四年四月一日に高齢者特別給付金が新設(八三歳以上九割給付)され、四十五年四月一日に高齢者特別給付金の改正(八三歳以上入院九割、外来一〇割)、翌年四月一日には対象年齢が七〇歳以上になり、六月一日に外来のみ現物給付実施となった。四十八年一月一日に老人医療費地開始(七〇歳以上と寝たきり)され、四月一日に老人ホーム入所者にたいする適用除外基準を緩和した。五十八年二月一日に老人医療費の給付が国民健康保険から分離、別制度「老人保険法」が施行された。対象は七〇歳以上の者および六五歳以上の寝たきりの者である。医療費の七〇パーセントは各保険者負担、三〇パーセントは国が三分の二・県と市が各六分の一負担であった。
長野県は昭和二十三年以来、身体に障害をもつ人々が、自らの潜在残存能力にたいしての自覚を高め、自らの力でその可能性を追求し、社会に復帰できるようにするための諸機関・諸施設を長野市にも設置してきた。そのなかにはつぎのようなものがあった(カッコ内数字は開設年)。
①傷痍者授産所(23)(25年身体障害者授産所に改称、27年同更生指導所に吸収)、
②身体障害者更生旧談所(25)、
③身体障害者更生指導所(25)、
④身体障害者義肢用具製作所(25)、
⑤精神薄弱者更生相談所(35)、(以上の諸機関は三十九年に身体障害者更生相談所に付置され一本化する)などである。
さらに、長野市下駒沢に設置された諸機関・施設には、①身体障害者福祉センター設置(41)、②自動車運転訓練場完成訓練開始(46)、③長野県身体障害者リハビリテーションセンター着工(47)同センター完成(49)、④病院開設(49)、などがあった。
この県身体障害者リハビリテーションセンターは、昭和四十九年(一九七四)の開設以来長野県のリハビリテーション活動の中核的施設として、障害者の社会復帰を目的として、更生相談から医療・職業訓練までの一貫した総合リハビリテーションサービスの提供をおこなうために、施設・設備の充実と職員の資質の向上に努めてきた。その結果、平成十二年(二〇〇〇)現在、定員は肢体不自由者厚生施設三〇人、重度身体障害者更生援護施設一一〇人、短期保護事業四人、病院規模八〇床の規模の施設となっている。
このセンターの主要な目的は、つぎの三点に要約される。
①身体障害者の更生に必要な相談…身体障害者にたいし、医学的・心理学的・職能的判定をおこなうとともに、医療・職業・生活・住居などの相談に応ずる。
②身体障害者に対する総合的リハビリテーションの実施…病院と施設とを有機的に結びつけ、医師・看護師・理学療法士・言語療法士・義肢装具士・心理判定員・生活指導員など各専門職員のチームプレーにより、個々の障害について策定したり、リハビリテーションプログラムにそって、社会復帰のための治療と訓練を実施する。
③地域リハビリテーションの向上…県内の関係各機関と連携し、リハビリテーションに関する情報の収集とその活用をはかり、関係機関へ情報提供をおこない、地域リハビリテーションの発展と向上をめざす。
センターの業務は、管理部・指導部・医務部・看護部・更生相談室に分かれて、相互に連携しながらすすめられている。中核部門である指導部は、肢体不自由者厚生施設・重度身体障害者更生援護施設で障害者の職業訓練を実施している。