障害者福祉と施設

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昭和二十四年(一九四九)十二月に身体障害者福祉法が施行されてから、長野市は障害者福祉の充実のために取りくんできた。五十年度には国・県から身体障害者モデル整備都市に指定され、以後、きめこまかな障害者にたいする福祉施策が講じられてきた。

 市の障害対策の特色は、障害者の具体的な日常生活にかかわる障害をあらいだして、その一つひとつに順次対応しようとした点である。そのきっかけは前述の昭和五十年度から始まる身体障害者福祉モデル都市建設事業の推進であった。これは身体障害者が生活圏をひろげ、社会生活に積極的に参加する機会を多くするため、模範的な生活環境を整備し、一般市民の理解を深めて身体障害者の住みよい環境づくりの普及と促進をはかろうとするものであった。その中心的な事業の内容は、つぎのようであった。

①道路・交通安全施設の整備(盲人用信号機設置、点字タイル敷設、歩道段差切りさげ、ガードレールの敷設等)

②公共施設の構造・設備の改造(出入り口のスロープ化、自動ドア設置、点字タイル敷設、便所改造)

③公共施設・公園等の車椅子の配備(市役所、市民体育館、善光寺、国鉄長野駅等)

④移動浴槽車・リフト付バスの購入、電話相談網の整備等

⑤身体障害者用公衆便所の整備(善光寺境内、権堂町、城山公園)

⑥身体障害者専用住宅建設(中御所一六戸)

 この時期、障害者福祉のうえで画期的なことは、昭和五十七年(一九八二)の国際障害者年を記念しての「長野市障害者福祉センター」の建設であった。この施設は障害者や福祉団体の人々の会議・訓練・スポーツ・レクリエーションやボランティア活動のためのものとして、鉄筋コンクリート二階建て・プールつきで、長野市鶴賀に建設された。事業および利用内容は、①各種相談および助言指導、結婚相談ほか、②講習会、研修会、各種催し物、障害者福祉講座、手話講習会、ふれあいの集い、作品展、各種スポーツの講習会・大会等、③機能回復訓練および日常生活訓練、④身体障害者・視覚障害者ワープロ教室、⑤ボランティア団体の育成、⑥障害者団体などの各種会合に必要な便宜と援助、⑦啓発活動などである。


写真18 昭和57年に建設された障害者福祉センター

 なお、六十二年六月からは障害者関係団体の活動促進などをはかるため、長野市身体障害者福祉協議会事務局がセンター内に開設され、平成七年(一九九五)三月同事務所は社会福祉法人に認められて、センターの受託運営をしている。

 また、この時期における長野市の障害者を対象とした福祉事業は表11のようである。

 長野市内には平成十二年現在、障害者の福祉施設が二八ヵ所設けられている。そのうち、知的障害者援護施設・身体障害者更生援護施設・心身障害児援護施設は、表12・13・14のようである。


表11 長野市のおもな障害者福祉事業


表12 知的障害者援護施設


表13 身体障害者更生援護施設


表14 心身障害児援護施設

 その他、長野市内には、障害者関係の福祉施設に障害者共同作業訓練施設九ヵ所と生活寮二ヵ所があり、大きくつぎの二つがある。

 第一は、長野若槻園のコロニー訓練部である。これは昭和四十三年(一九六八)設立の身体障害者更生援護施設である。この施設は、国立長野療養所で長期療養をしていた結核回復者たちが中心となってつくりあげた社会復帰のための授産所がその前身である。コロニー訓練部は、身体障害者に作業を通じて必要な訓練をおこない、自活をはかることを目的として訓練・作業・授産の各部を設けている。訓練の内容は、弱電部品加工・紙器加工・タイプ印刷・名刺印刷・縫製加工・温室園芸などである。また、同園の昭和四十八年に設立された長野福祉工場は、重度の身体障害者で作業能力はあるが、設備・通勤等の事情により就職困難な者に職をあたえ自活させるために、印刷と縫製の業務をおこなわせている。印刷業務はオフセット印刷全般にわたっており、記念誌・機関紙・文集・ちらし文・伝票類などを扱い、営業・仕あげ・納品までの一貫した内容であった。縫製業務は銀行・官公署・学童・病院の白衣などの制服全般にわたっていた。同園の重度授産部は、身体障害者手帳の交付を受けた者で一、二級またはそれに相当した者を対象にして、その自活をはかるために本園の施設を利用して必要な訓練を実施している。


写真19 ふれあいまつりで車椅子を体験する子どもたち

 第二は、愛の樹園である。愛の樹園には長野市愛の樹園と篠ノ井愛の樹園の二園がある。心身に障害のある零歳から就学前までの乳幼児にたいし、母子通園によりその発育を促すために必要な保育と療育訓練をほどこすことを目的にした施設である。ここでは、園児の自立への援助指導をするとともに、母親の精神的安定の確保と助長がはかられている。したがって、愛の樹園では、①母子通園により母親の精神的安定の助長をはかり、乳幼児にたいしての学習を深めるとともに、保育を通して遊びの中に訓練を定着させる、②単独通園により母親分離をはかり、遊びを通じて知的発達と感覚機能の増進、多様な体験と集団生活への適応をはかる、などのような保育の具体目標をたてて指導にあたっている。