児童館の設置と運営

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長野市は児童福祉法の精神に基づいて、高度経済成長期の昭和四十年代に各方面の要請を受けて、「かぎっ子」(留守家庭児童)の急増にともなう児童の健全育成対策としての児童館の設立に乗りだした。児童館には、幼児型児童館(三歳~五歳)と学童型児童館(小学校一年生~五年生)がある。長野市では三〇人以上の収容人員をもつ学童型児童館である児童センターの設置をすすめ、現在ではこれが全児童館の約八割をしめている。

 長野市における児童館の設立は、幼児型児童館から始められた。それ以前は、各地区の公民館・社寺等を利用しての季節保育所がその役割りをになっていたが、時代の趨勢(すうせい)にともない公私立の通年制認可保育所へとかわっていった。しかし、要保育の該当児が少なくて保育所設置の要件を満たせない山間地や、保育所の設置を待ちきれない地域は、保育所にかわる施設を市に要請した。そこで、市は「国庫補助による児童館の運営」などの法律に準拠して、幼児型児童館を設置した。長野市における最初の幼児型児童館は、昭和四十年(一九六五)四月一日に設置された小田切児童館(平成八年度閉館)であった。以後、昭和四十八年度までに川合新田・芋井・浅川・古牧・影山(芋井入山)・大豆島・北郷(浅川)の七ヵ所に幼児型児童館が開設された。

 幼児型児童館はその後、公私立保育所・幼稚園の普及と充足にともない、「その建設は望ましくない」という国の指導もあって、長野市でも四十九年以降は増設されず、順次、幼児型児童館から学童型児童館へと機能の転換がはかられた。現在残されている幼児型児童館は、川合新田・古牧の二児童館である。

 いっぽう、昭和四十年代後半から家庭や社会の変化により、母子・父子家庭に加えて、夫婦共働きによる「かぎっ子」が急増した。そこで、地域の育成会等の児童関係団体は、児童の非行防止と健全育成を目的として、「かぎっ子」の集まりである学童クラブ(一般児童をふくむ)を組織して活動を開始した。その活動の場所として、地域の公民館・集会所などが使用されたが、児童数が多くなり活動が盛んになるにつれて手ぜまになり、独立した児童館の必要性が叫ばれるようになった。そこで、各地域からの小学生を対象にした児童館設置の要請に基づいて、国・県の補助を受けて児童館の設置が順次すすめられた。そのなかには、学校の校舎を改造してこれにあてたものもあった。児童館設置の年次別進行状況は表15のようであった(幼児型児童館を除く)。


表15 長野市児童館の設立状況


写真20 各地に児童館を設置

 平成十二年(二〇〇〇)七月現在、児童館・児童センターの未設置地区は小学校区でいうと、加茂・後町・山王・信里・松代・清野・西条・豊栄・西寺尾・綿内・青木島・真嶋・七二会・信田・更府の一五地区で、そのうち、加茂と綿内は現在建設中である。未設置地区のうち、民家や小学校校舎などを利用して児童クラブを設けているものは表16のようである。


表16 児童クラブ設置年月


写真21 松ケ丘児童センターで遊ぶ子どもたち

 児童館・児童センター・児童クラブの児童厚生施設などの施設別の事業概要・施設規模・対象児童数・職員配置の状況は表17のようである。


表17 児童厚生施設などの概要 (平成12年度)

 児童館の運営は、当初は各地の社会福祉協議会などの任意の団体がおこなってきたが、諸法規などの整備をまって昭和四十七年(一九七二)四月一日から、市のすべての児童館の運営を社会福祉法人長野市社会福祉協議会に委託することになり、今日にいたっている。児童館における学童保育は、共働き・母子・父子家庭の子どもたちの放課後と学校休校日の生活を守るのが目的で、父母が働いている間を子どもたちが安全で充実した生活が送れるようにとの願いから出発している。館長一人と厚生員二人(児童センターの場合は体力指導員一人が加わる)が指導にあたり、子どもたちの安全や健康の管理、身の回りの整理や宿題をみてあげるなど、学童保育の生活全体に目をくばっている。

 児童館での生活の大部分は遊びであるが、買い物やおやつ作り、本読みや読みきかせ、描画や工作、行事の取りくみなどさまざまである。体調の悪いときは、父母と連絡をとりながら静養をしたり、医者にいくこともある。塾や稽古ごとがあれば、指導員に伝えてでかけることができる。年間行事としては、一泊保育(夏)、館外活動(年数回)、ブロック交流会、誕生会、餅つき(一月)、焼き芋大会などがある。

 保育時間は、平日の月曜日から金曜日までは放課後から一六時、第二・第四土曜日は九時から一七時、上記以外の土曜日は放課後から一七時となっている。なお、長野市の場合は、保育料は無料で、おやつ代として月三二〇〇円を徴収していた。また、児童館ごとに「母親クラブ」という地域組織があって、児童館の運営に協力参加し、児童保育の向上につとめている。