通信情報の高度化と市民生活

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長野市は市民のため、模写伝送装置(FAX)機器を昭和四十五年(一九七〇)五月に導入して、窓口事務の行政効率化を始めた。三支所で開始し、六月に一二支所およびバスターミナル市民連絡室に設置し、つづいて他支所・連絡所にもひろげて、大合併後の市民の戸籍・証明書等の便宜をはかった。五十一年には戸籍副本をマイクロフィルム化し、翌五十二年には課税台帳をマイクロフィルム化して、行政事務の簡素化をはかった。さらに五十九年には原戸籍を、八〇年間の保存年限に耐えうるよう、マイクロフィルムに収め、プリント機能内蔵の高速自動検索機を導入して、市民のもとめに応じて、直ちに引きだして交付できるような業務システムとした。

 六十年(一九八五)にはホストコンピューター導入によって、電算オンラインシステム・住民情報システム・印鑑情報システムを稼働し、端末機を本庁と支所に設置した。これによって、市民課で管理する業務のうち、住民基本台帳・印鑑登録台帳はホストコンピューターにデータ登録してオンライン化しているので、住民票の写し・印鑑登録証明書は、端末機を操作して支所の窓口で直接交付できることになった。その後、国民保険・年金・福祉などのシステムが運用され、六十二年には各種税(市民税・県民税・軽自動車税・固定資産税等)情報システムの運用を開始した。

 市教育委員会は学習指導要領改定に備えるとともに、情報技術(IT)の急速な発展と情報化のすすむなかで、子どもたちの教育の情報化を推進するため、五十九年から六十三年にかけて、裾花小・篠ノ井西小・西部中・篠ノ井西中の四校をCAI(コンピューター使用の教育システム)研究指定校として、各二〇台のコンピューターを導入して、算数数学・理科・技術などの教科でのパソコン授業やクラブ活動での活用の研究をすすめた。その後、計画的に市内各小中学校に教育用コンピューターの整備をすすめた。小学校段階では、コンピューターに慣れしたしみながら、情報を適切に活用する基礎的な能力を育成し、一人ひとりの個性の伸長や能力・適性に応じた学習指導をおこなうことをめざしている。中学校では小学校の学習をもとに、よりいっそうの情報能力の育成をめざすとともに、各教科での活用をすすめている。平成十年(一九九八)から十三年にかけて、市とNTT東日本とのマルチメディア教育利用共同研究(フルネットセンターにVODサーバ、各学校に分散動画サーバ)によって、十三年度末の視聴回数は二〇万九八五八回になっている。十四年からは教育の情報化推進共同研究会として、「自ら学び自ら考える力を育てる」手段としていこうとしている。十四年には、市内小学校に一四八五台・中学校に八七五台のパソコン機器が整備されて学習がすすめられ、さらに特別教室や校長室に各校六台が配置されて活用できるようになっている。


写真55 1人1台のパソコンを操作する小学生 (松ヶ丘小学校提供)

 公民館では、市民がいつでも検索できるように生涯学習課ホームページの充実をはかり、各種学級講座・施設等の情報を提供している。そして、事業の講座のなかに「情報通信技術(IT)講座」を開き、パソコンの基本操作・文書作成・インターネットの利用および電子メールの送受信にかかわる技能を習得できるよう、成人向け講座として実施している。

 六十二年七月に開館した長野市立図書館でも、図書のOAシステム(一括コンピューター管理)で市民サービスの充実につとめている。これにより、貸し出し・返却など瞬時にすみ、検索などもすばやくおこなわれるようになった。図書管理・帳票作成・統計作成も容易となった。南部図書館とコンピューターのオンライン化がおこなわれ、平成元年には利用者専用図書検索もできるようになり、その機器には「あっ太君」と名づけられた。南部図書館の移動図書館「いいづな号」業務もコンピューター化している。

 市消防局では平成五年四月から、火災や救急などの災害救助活動をより早く的確におこなうため、新たに消防緊急通信指令システムを導入した。これまでは、一一九番通報を受けると住宅地図などで災害・救急地点を確認し指令をしていたが、新しいシステムでは、一一九番通報による町名と番地を入力すると、自動的に付近の住宅地図が画面に表示され正確な位置が確認できる。さらに、あらかじめ出動の準備を促(うなが)す予告指令が消防署・分署に出され、現場に急行する消防車・救急車や出動する隊の編成、走行道路や水利の状況も確認でき、出動指令の文書送付などが、コンピューター制御のもとに瞬時におこなわれるようになった。

 平成八年三月長野市は、郵政省の推進する「地域・生活情報通信基盤高度化事業(自治体ネットワーク施設整備事業)」の採択を受けた。高度な情報通信網を張りめぐらし、地域の振興をはかろうとするもので、未来型通信モデル都市を志向するもの(テレトピア計画)である。そこでこの事業の中核である、長野市フルネットセンターを設置することになった。行政の出先機関・学校・企業・家庭等とのネットワークをはかり、行政情報・都市情報・学校教育での活用、福祉・健康・医療・生涯学習等の応用、地域活性化のための企業情報の提供など、マルチメディア情報の受発信システムの構築をすすめた。


写真56 長野市フルネットセンター

 市は情報通信技術(IT)の成果を活用して、市民や企業の要望にこたえた行政サービスを提供し、行政事務の効率化や開かれた市政をすすめようとしてきている。市のめざす情報化の基本方針は、①行政サービスの高度化、②開かれた市政の実現、③行政事務の高度化・効率化、④行政情報化推進基盤の整備、⑤市民・産業の情報化の支援の五項目である。

 地域向けシステムとしては、平成九年から「市の紹介・くらしのガイド・広報ながの・観光ガイド・一課一ホームページ・公聴(みどりのはがき・意見等)」をホームページで提供している。さらに地域情報システムとして、市役所本庁(二ヵ所)・支所(一三ヵ所)に地理情報システム端末を設置して、一二分野(公共施設・防災・統計・環境・文化財・観光等)の情報が、閲覧可能となった。その他、地域情報化をすすめるため、八システム(住民情報・消防等)が稼働している。

 平成十年(一九九八)四月若里六丁目に、三階建ての長野市フルネットセンターが開館した。マルチメディア情報先進都市を構築して、市民生活の向上および地域活性化をはかるための拠点として設けられたものである。市民が自由にVOD(ビデオ・オン・デマンド)・インターネットの体験や高画質の映像が楽しめる施設を設け、センターと市立小中学校六八校を光ファイバー回線で結び、VODシステム等を活用したマルチメディア教育利用の共同研究(市・NTT東日本)がすすめられるようにした。十一・十二年のフルネットセンターの事業は、①マルチメディア教育利用研究事業、②マルチメディアモデル市役所展開事業(地理情報システム=GISの開発実証実験)、③ギガビットネットワーク研究開発事業、④一課一ホームページ作成事業、⑤地域インターネット導入促進事業(長野市施設および講座情報提供・予約システム)、⑥信越地区地上デジタル放送研究開発用施設費の協力、⑦保険・福祉・医療および企業等の分野における情報化の調査・研究をし、市民・企業等に利用可能な情報基盤の整備などとなっている。十三年のフルネットセンター利用状況は、一般入館者一万四六五二人・有料利用者一九六六人・イベント利用者二二〇人・パソコン教室三四五四人・視察者八一一人、合計二万一一〇三人となっている。


写真57 パソコン教室で学ぶ市民

 市は平成十二年(二〇〇〇)十一月から、庁内電子メール、会議室・車両予約、日程管理等のグループウェアシステムの運用を始め、十三年からは例規集検索システムの運用を開始した。十四年には、メールマガジン「ふれ愛ながの」を週一回木曜日に希望者あてに発行するほか、市政テレビ・ラジオ番組等マルチメディアを通じて市政についての市民の理解と協力を得て市政を推進しようとしている。