日本の屋根

5 ~ 6

長野町は善光寺の門前町として発展した古い町で、善光寺を扇の要(かなめ)としている。町は裾花(すそばな)川、湯福(ゆぶく)川の扇状地のうえにあり、町の中心部はほぼ南向きの傾斜地である。善光寺境内入り口の、大門町と横町の交差点が近世に高札(こうさつ)のあった場所で、そこに道路元標(げんぴょう)が設けられている。標高三九二メートル。

 市役所の位置は北緯三六度三八分四五秒、東経一三八度一一分四七秒、標高三六二・四九メートルである。長野市の緯度は北極と赤道のほぼ中間にあたる。また九州南端がほぼ北緯三一度、北海道北端がほぼ北緯四五度だから、その中間に近い。また、経度も九州西端がほぼ東経一二九度、北海道東端がほぼ東経一四五度だから、これまたその中間に近い。緯度は国内では富山市、北安曇郡八方(きたあずみぐんはっぽう)尾根、栃木県日光市などに近い。中国では青島(チンタオ)、ヨーロッパでは地中海の入り口のジブラルタル、アフリカ大陸の北端アルジェなどに近い。東経では新潟県上越市、静岡県御前崎などに近い。


写真1 長野市道路元標

 長野の標高は県庁所在地では一番高い。日本は山地が多いけれど、主な都市の大部分は海岸またはそれに近い平坦(へいたん)部にある。標高二〇〇メートル以上の地にある人口三〇万以上の都市は長野市だけ、人口約二〇万の都市も甲府市と松本市だけである。このように、長野のある場所は緯度からみても経度からみても日本の中心に近く、標高も高く、まことに日本の屋根と呼ばれるにふさわしい位置にある。