夜ばなし

433 ~ 434

長沼の宮司宅には、柳原の「夜ばなし」が伝わっていたという。布野の市右衛門の家に毎夜戸をたたくものがいる。見るとこどもがいるので、追いかけたところ川に飛びこんでしまった。そこに市右衛門の家の草履(ぞうり)があったので持ち帰ったら、それからは来なくなったという。それはかわうそだったという。

 鴨(かも)をとった狩人(かりゅうど)が、村山の一里塚を通ると、一つ目小僧が出てきて鴨をとろうとした。狩人はすぐ鉄砲を向けたが、撃っても撃っても当たらない。最後の残り一発が当たった。見るとたぬきのしわざだったという。

 美しい娘さんが金持ちの人と貧しい人の二人から結婚を求められた。娘さんはどちらにしようか中俣のお稲荷様にお願いしたところ、きつねが出てきて貧しい人の方を勧めた。娘さんはそのようにしたところ、旦那さんと毎日毎日いっしょに楽しく働けてよかったという。

 小島田圃(たんぼ)に羽を傷めた雁(がん)がいた。それをみつけた吾作は、食べようと思ってつかまえたところ、ものすごく悲しそうに鳴くので、薬をつけて家で飼った。元気になったので放したところ飛んでいった。翌年、吾作が田圃に出ると雁が一粒の実を落とした。それを植えたところ蓮根で、どんどん増えて豊かになったという(『柳原公民館報』六三・六四・六七・六八号)。


写真11 村山の一里塚