村の特産物

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 ①稲田の瓦(かわら) 明治時代になって農村にも屋根瓦の需要が多くなり、各地に瓦焼き業が興された。文政(ぶんせい)三年(一八二〇)に三河から稲積村に移って瓦製造を始めた人があり、『稲田村誌』(明治十四年)に「瓦一万二千枚、其質中等、近隣諸村へ販売ス」とある。しかし、小規模な地域産業のため大正末期には廃業した。

 ②上野の縫針 明治初年、上野村に家内工業として縫針工場を営む家があり、毎年三万六〇〇〇本の縫針を長野町へ売り出しており、現在も「針屋」の屋号で呼ばれている。

 ③田子酒 田子神社境内から湧出(ゆうしゅつ)する清浄な清水を使用して、江戸時代から田子村には造り酒屋があった。明治初年には酒造株も開放されて八軒の造り酒屋ができた。田子酒として長野町をはじめ近郊に売られて、生産高は年九五五石となり、水内郡でも柏原についで第二位であった。大手酒造の池田屋は明治十一年(一八七八)九月屋敷内に御小休所の御殿を建てて、北陸ご巡幸の明治天皇を迎えた。


写真10 明治天皇田子御小休所