細石刃核(さいせきじんか)

714 ~ 715

先土器(旧石器)時代、地球は更新生の最終末期、ウルム氷期で海水面が今より一二〇メートル下がっていて、日本列島は大陸と地つづきになっていた。やがて地球は温暖化に向かい、日本列島は大陸から分離した。もみやとうひなどの針葉樹林からぶなやならなどの落葉樹林に変わり、しかやいのししなどの中小動物が繁殖した。このころ、ナイフ形の石器文化(三万~一万四千年前)から細石器文化(一万四千~一万三千年前)の時代を迎える。約一万三千年前のこの細石刃をとる長野市内で唯一の細石刃核を昭和五十四年(一九七九)小野平の西山和之が小野平東の自分の畑から発見した。この細石刃核は頁(けつ)岩で、長さ九・一センチメートル、幅五センチメートルの舟底形をしている。この細石刃核から、しかの角などを使って、長さ二センチメートル、幅五ミリメートル、厚さ二ミリメートルで一グラムにも満たない細石刃と呼ばれる、安全カミソリの刃のような薄片をはぎとる。広い左端には、細石刃をはぎとった五条の剥離(はくり)面が残されている。この薄片を二〇センチメートルぐらいの棒や骨の左右に溝を付けて埋めこみ、これを槍(やり)やナイフとして使った。軽くて持ち運びに便利で、取り替えができるので、当時の獲物を捕る道具としては最高の道具であった。


写真1 小野平出土の細石刃核 長さ9.1cm(西山和之所蔵)