温湯温泉(市営温湯温泉市民センター)付近では今も蓮根が栽培され、「綿内蓮根」として販売されている。温湯の蓮根栽培は、天保(てんぽう)十二年(一八四一)温湯の稲田新平(いなだしんぺい)が、埴科郡東条村加賀井(かがい)(長野市松代町)から赤蓮根の種を取り寄せ、試作したのに始まる。翌十三年八月、新平の勧めで温湯の左源太が蓮根栽培願い人となり、藩のためにもなるので、温湯前の深田を収益の多い蓮田(はすだ)にしたいと須坂藩に願い出ている。蓮根の栽培当初、すずめが蓮根の葉の下に隠れるのを見た百姓たちが、蓮田は雀害(じゃくがい)を増すと蓮田廃止を藩に訴え、このため蓮根栽培が一時中断したときもあった。