高岡の「小豆焼き占い」行事は国の民俗文化財に、また、赤野田(あかんた)神社の太々神楽(だいだいかぐら)は、市の無形文化財に指定されている。ともにこの地区の代表的伝承行事である。
赤野田神社の太々神楽は、川中島合戦のとき戦乱をいとった武田の兵士が、この山間の地に逃れ住んで伝えた甲州獅子と伝えられている。獅子神楽囃唄(はやしうた)のなかに「岡崎ぐろしゅう、木曽のかけ橋、太田の渡し」などの地名が出てくるのは、伊勢から尾張・三河・南信濃を経てこの地にいたる道中の順路を示しており、「天の岩戸・三島・鹿島・天鈿女命(あまのうずめのみこと)・住吉神」などは遠く古代神話の姿を伝承しているといえよう。
昭和初期ごろまでは「小豆占い」は正月行事として保科地区では広くおこなわれていた。現在は高岡だけでおこなわれている。高岡の小豆占いは、江戸時代からおこなわれている素朴な行事で、この集落では毎年正月十五日のどんど焼きに引きつづいて、道祖神日待占い「小豆焼き」がおこなわれている。この行事は、今は公民館でおこなっているが、昔は前年祝い事のあった家でおこなっていた。いろりで真っ赤に焼けこんだカワラケのなかに、頭役が小豆を一粒ずつつまんで入れて、「道陸神(どうろくじん)さん、道陸神さん、ご機嫌よかったらくるりと回らっしゃい」と唱え、その回り方によって世相や農作物の作柄を占っていく。回転状況によって五段階に区別され、勢いよく回転して外に飛び出すときは、「上上ノ上」となり、回らないで黒く焼けてしまう場合は「下」と判断される。
このほか祭礼に関する行事には、高井穂神社の夏祭りに保科八地区で奉納する「天富貴舞(あまぶきまい)」や御柱祭、御遷宮祭など大祭に奉納される「赤熊(シャーマ)」がある。