あとがき

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 長野市誌全一六巻には、明治二十二年(一八八九)の町村制施行によって成立し、のちに現長野市にふくまれることになった町村の歴史と地誌を記述する旧市町村史編二巻が計画されている。二巻のうち本巻には、旧上水内郡・旧上高井郡の旧町村(地区)を収めた。

 旧市町村史編は、地区を単位として、二巻の制約のなかでページ数の許すかぎりできるだけ具体的に記述することにつとめた。これによって、各地区の歴史と現状を長く記録にとどめるとともに、広い視野からみる歴史編の記述と互いに補いあって、長野市域の歴史がよりゆたかに解明されることを期している。

 旧市町村史編のための調査と編集・刊行の計画については、すべて市誌編さん委員会と市誌刊行委員会に付議して進められた。

 旧市町村史のための調査は、これまでにつくられている各市町村史誌類をふまえ、現地巡回をおこない、そのうえでそれぞれの地区に関する文献・文書の調査と聞き取りをふくむ現地踏査と双方にわたって進められた。平成二年度に市誌準備室に担当者をおいて、基礎的な調査と立案を進めた。同三年度以降、旧市町村史専門部会を設けて部員を委嘱し、調査・編集の計画と地区分担を定め、専門部会および部員各自による調査と、市誌編さん室による調査とを組みあわせて、調査を本格的に進めた。

 専門部会として調査をおこなった資料所蔵先の主な機関は、信濃教育博物館・長野県立歴史館・県立長野図書館・長野市立博物館・長野県庁行政資料コーナー・長野県議会図書館・長野市議会図書館・長野市役所などである。各地区の調査にあたっては、委嘱した調査協力員の助力を得たほか、多数にのぼる方がたから写真をふくむ貴重な資料の提供や聞き取りなどに協力していただいた。

 平成六年度から原稿作成に入った。まず共通した節・項を立てるとともに、地区の個性的事象の位置づけ方を検討した。これをうけて原稿作成を進めたが、素稿によって地区の人たちの意見を聴取したり、書きあげた原稿を部会および市誌編さん室で検討してさらに修正を重ねたりするなど、正確で読みやすいものにすることにつとめた。各地区ごとに航空写真をはじめなるべく多くの写真を載せたが、これは写真資料の特性を生かすと同時に、親しみやすさを高めるためであった。

 本書の刊行にいたるまでには、調査や資料・写真提供に快く応じてくださった機関・個人各位をはじめ、調査協力員その他多数の方がたから協力をいただいた。また、本書の製作にあたっては東京法令出版株式会社の積極的な協力をうけている。あわせて深く謝意を表する。

 長野市誌は、市制施行百周年にあたって本巻をはじめ最初の四巻を刊行し、以後平成十六年度まで継続される予定である。この大きな修史事業が順調に進められるよう、ひろく市民各位のご理解ご協力を切にお願い申しあげるしだいである。

  平成九年(一九九七)十月十六日

長野市誌編さん委員長 中村一雄