二 寺院

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 円福寺 曹洞宗 西横田区 ①本尊 釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ) ②山号 龍眼山(りゅうがんさん) ③由緒 寛永十年(一六三三)ころ松代浄福寺咄芸(とつげい)の法弟全長によって建立された。往時松代藩の処刑場に接していて、藩の求めで処刑者の供養もおこなっていたので、寺紋に六文銭(ろくもんせん)を使用している。火災にあい七世独峯が再興し中興の祖となった。そののちふたたび火災にあい密音が再建したので再中興の祖としている。現本堂は一五世文国が建立。一九世幸邦は教化活動に専念、その説く「心の教育」は全国に多くの信奉者を集めている。また戦後間もなく児童福祉施設「円福寺愛育園」を開設、アジア学童支援の会会長として学童や留学生にたいする各種の支援活動を展開するなど、社会活動でも大きな功績をあげている。本山総持寺の東堂もつとめ、名誉顧問。

 観音寺 東横田区 真言宗 ①本尊 阿弥陀如来(あみだにょらい) ②山号 慈眼山(じがんさん) ③由緒 寺伝によると往時は高野山金剛峯寺(こうやさんこんごうぶじ)の末寺であった。境内大悲閣(だいひかく)の十一面観音は空海が諸国遍歴のおり、一刀三礼(いっとうさんらい)をもって刻み安置したものといい、このゆえに慈眼山観音寺(かんのんじ)という。川中島の戦いで伽藍(がらん)が焼失したが、観音と金剛力士は難をさけることができたという。宝永三年(一七〇六)四世の明専が堂宇を再建した。もとは村浦(むらうら)の地にあったが、大正十二年(一九二三)の千曲川の改修のときに現在地に移転再建された。

 宝昌寺 御幣川区 曹洞宗 ①本尊 釈迦牟尼仏 ②山号 徳寿山(とくじゅさん) ③由緒 群馬県安中市の桂昌寺(けいしょうじ)末寺。慶長十二年(一六〇七)桂昌寺九世玄鶴(げんかく)が薬師堂の境内を広げて「薬王山宝昌寺」を開山した。寛保(かんぽう)の大洪水で堂宇が流失、寛延元年(一七四八)三世理本により再建。宝暦八年(一七五八)開山の徳を慕う松代藩家老鎌原左膳(かんばらさぜん)により境内が拡張され、本堂・山門・衆寮などを備えた伽藍となった。左膳を開基(かいき)として山号も鎌原家の先祖にちなんで徳寿山と改めた。現本堂は弘化の地震で伽藍が壊滅、四年後に再建されたものである。

 境内の医王殿(いおうでん)薬師堂の本尊薬師瑠璃光如来(るりこうにょらい)は七寸(二一センチメートル)余の、身に甲胄(かっちゅう)をつけ左手に瑠璃壺(るりつぼ)、右手に鉾(ほこ)をもった木造で、鬼女紅葉(きじょもみじ)を退治した平維茂(これもち)の作と伝えられている。一月八日の初縁日は参詣の人でにぎわう。

 香福寺 御幣川区 浄土宗 ①本尊 阿弥陀如来 ②山号 五劫山(ごこうさん) ③由緒 慶長十年僧独立によって開基された。川中島町原の蓮香寺四世覚誉の弟子が住職についてから、本末の関係がつづいた。弘化の地震で本堂が倒壊し明治十二年(一八七九)に再建された。境内に六地蔵が二組、地蔵尊が数体あり、地域住民や旅人の心のよりどころとして信仰されていた。旧高札場であり村番所の所在地であった。昭和十年(一九三五)火災により本堂・庫裏を焼失、昭和六十年に再建された。境内に葉に実のつく珍しい「お葉つきイチョウ」の木がある。

 長円寺 唐臼区 浄土真宗本願寺派 ①本尊 阿弥陀如来 ②山号 池田山 ③由緒 武田の家臣池田備中守教光が蓮如(れんにょ)に帰依(きえ)し、蓮如にしたがって善光寺に参詣のおり、教忍の号と六字の名号を賜り文明(ぶんめい)四年(一四七二)建立した。天文(てんぶん)年間(一五三二~五五)兵火にかかり蓮如より賜った六字名号以外を失った。永禄(えいろく)二年(一五五九)専龍によって現在地に再建された。平成六年(一九九四)本堂・庫裏の大改修がおこなわれた。

 耕心庵(こうしんあん) 柳沢区 曹洞宗 ①本尊 釈迦牟尼仏 ②山号 金剛山(こんごうさん) ③由緒 寺伝によると永禄四年(一五六一)武田信玄が玄峯院(げんぽういん)二世宗益に命じて、この地にあった堂宇を改修させた。法性山甲信庵(ほっしょうさんこうしんあん)と号し、信玄の守護仏青面金剛(しょうめんこんごう)を安置し四六貫文を寄進したという。のち門尭(もんぎょう)が曹洞宗に改め開基となった。のち火災にあったが、五世恒川に深く帰依していた松代藩士禰津(ねつ)甚平によって堂宇が現在地に再興された。寛政八年(一七九六)建立の宝篋印塔(ほうきょういんとう)がある。

 その他の寺社 会区に曹洞宗会栄山(かいえいさん)地蔵寺がある。武田の臣原大隅守(おおすみのかみ)の開基といわれ位牌(いはい)と墓が残っている。御幣川に日蓮宗の龍灯山(りゅうとうさん)日蓮寺と、戦後、世界平和を願い戦没した英霊をまつった太平(たいへい)観音堂がある。幣川(みことがわ)神社の入り口に、歯瘡医殿(しそういでん)(通称はくさんさん)という小社がある。「歯痛のときお参りし、治ったらタバコを一ひねりあげる」と伝承されてきた珍しい社である。