篠ノ井駅が開業したのは明治二十一年八月十五日である。駅は本来塩崎村の篠ノ井に設置される予定だったが、宿場が衰えるという地元の反対で断念。第二の候補地中津村原西方の地も地元の反対があって、現在地に落ちついたものである。駅開業にともなって旧篠ノ井から中牛馬萬屋(ちゅうぎゅうばよろずや)運送店、内国通運取引店酒井運送店などが進出してきた。しかし当時は駅員四人、一日の列車の運転回数四本、乗客四四人、発着貨物一五トンという規模であった。運賃も長野までが八銭であった。当時の酒一升一〇銭、籾(もみ)一俵一円にくらべるとかなり高額であった。そのため一般の人びとの利用は少なく駅開業の影響はなかった。開業と同時につくられた駅前の道路は人の歩く中央を除いて草が生(お)いしげっていたという(『篠ノ井町報』昭和二年五月十五日)。