沖の窓石

121 ~ 122

岡田の寺沢家の庭には「沖の窓石」という庭石がある。ヒイラギの大木の元に据えられている。この石は天保五年(一八三四)二月、佐久の井出道貞が著した『信濃奇勝録』にある名石である。この本には「凹石(なかくぼいし)」と題して、七ヶ巻村(下高井郡野沢温泉村)と東大滝村(同)のあいだを流れる千曲川の石はみな窪みがあるとして、名石四つを図示している。その一番はじめに「小見(おみ)木島氏庭石 沖ノ窓石となづく」とある。「小見木島氏」は高井郡木島村小見(下高井郡木島平村)の豪農木島太右衛門であり、寺沢家と縁家の仲という。ここからおおぜいの人夫で舟にのせ千曲川・犀川をのぼり犀口から運んできたものだという。これが上田藩に知れて、不届千万の所業として御咎(おとがめ)をうけ、金三〇〇両を上納させられたという(口絵写真「沖の窓石」)。