犬石の虫送り行事

269 ~ 270

犬石 昭和五十八年三月十六日市無形民俗文化財指定。毎年七月三十一日小中学生と育成会員が公民館に集まり、昼間のうちにわらでミコシを二、三丁作る。ミコシは麦(稲)わらを固く樽(たる)型にたばねて、底に担ぐための竹の棒を二本並べて通し、なかに害虫を入れ、外側には花をさして飾りつける。夜になって大人や子供たちが集まり、ミコシを担ぐもの、鉦(かね)をたたくもの、松明(たいまつ)をかかげるものなど分担して行列をつくり、いっせいに「ナーノムシオクレ」と大声をあげながら村のなかを歩く威勢のよい行事である。最後は村はずれの虫送り場(馬捨て場)にミコシを集めて焼きすて、そこでジュースなどを飲んで終わる。

 戦前は若者連が中心で少年団が参加し、区長が先頭になり村をあげての大行事であった。ミコシも高さ二メートルほどのものをいくつもつくり村を練り歩き、虫送り場近くでは火のついたミコシを担いで飛びまわるという勇ましい行事であった。農民にとって害虫駆除は大切な農作業であり、虫送りは農民の願いをあらわした年中行事であるといえる。


写真4 犬石の虫送り