犬石の山のなかに犬の形をした長さ約四メートル、高さ約二メートル、胴回り約五メートルという大きな「犬石」という石がある。「犬石」には頭部がない。一〇〇年ほど前に頭の部分を割ってしまったという。
「犬石」のある下の窪地を長者窪と呼んでいた。その昔、長者窪に長者屋敷があった。ある日旅の僧が一夜の宿を求め泊まったがその僧は大金をもっていた。長者はその金に目がくらみ僧を殺し金を奪った。そのため長者の家は絶えてしまい、長者の家で飼っていた犬は荒れ狂って人びとを困らせた。そこに産土神がでて犬をさとすと犬は改心し、屋敷の裏山にいって石の化身となって村を守ったという。この化身が「犬石」であるという。犬石の老人クラブは毎年七月末日「犬石」周辺の草刈りと注連(しめ)を新しくしている。