中津地区には一〇〇ほどの石造文化財がある。『長野市の石造文化財』によると、そのうち多いのは地蔵菩薩(じぞうぼさつ)で単体一一基、六地蔵四組、ついで庚申塔(こうしんとう)一一基である。地蔵菩薩は親しみやすい姿でつねに身近に造立されている。地蔵菩薩は菩薩みずから救いの手をくだされる「ほとけ」と信じられ、また、現世利益(げんせりやく)の「ほとけ」として、人びとと深く結びついている。
世茂井(よもい)神社境内にある自然石の庚申塔には応永四年(一三九七)の銘があり古いといわれるが、銘については疑問視する専門家もいる。同境内には天明五年(一七八五)銘の市神と年不明の市大神がある。原村はかつて市が開かれたところで、市のいっそうの繁盛を願って立てたものである。以前は上町(市神)と下町(市大神)にあったが明治初年、境内に移された。徳本布教記念仏塔(六字名号)は、北原・貝沢・南原・今井・三ツ沢にある。
明治初年病夫に尽くし、貞節を守りとおし、奸僧(かんそう)に殺害された妻せんの碑は北原にある。また、地区内には、回国供養塔、各種観音、道祖神、日待塔などの石造物がある。