戸部

609 ~ 609

『和名抄(わみょうしょう)』記載の更級郡九郷のひとつ、斗女(とめ)郷について『信濃地名考』には「いま戸部、富部に作る」とある。これによると、平安時代の末ころ創始された富部御厨の「富部」も「戸部」も「斗女」の転語といえる。斗女郷も富部御厨もこんにちの戸部区がふくまれた地域で、「戸部」は郷名や御厨名を継承した地名といえよう。

 『古代地名語源辞典』では、「トメ」は「卜べ」「ドブ」の転語で「湿地、沼地か」と記している。中世になって伊勢信仰が高まってくると、伊勢の神霊(天照大神)が飛んでいって御厨(神宮領)にあらわれるという「飛び明神」の思想が生まれ、神明社として天照大神が祭られるようになった。