『長野市誌 民俗編』は、市域の民俗の実態とその意義とをできるだけ分かりやすく記述するために二部構成とした。第一部は民俗の実態を概観することを目的とし、昭和五十年(一九七五)に調査された『長野県史 民俗編』の資料をもとに、その後の調査資料などを加えて項目別に記述した。ほんらい、民間伝承は相互に深くかかわり合うものであるが、その関係に重点を置くのではなく、個々の民俗事象のあり方を羅列的にまとめたのである。しかし、民間伝承も時代と社会の推移のなかで、しだいに変化するものであるから、その変化をできるだけ明らかにしようと努めた。伝承地についてはその煩雑さを避けるために、一般的な習俗については個々に地名をあげなかったり、幾つかのところで代表させたりした。したがって、伝承地として示されなかったところには習俗がないということではない。『長野県史 民俗編』における調査地点および『長野市誌 民俗編』のためのアンケート調査の調査地点については一覧表を巻頭に掲げ、アンケート調査地点図を添えた。