第二部は、個々の民俗的事象がどのように関係しあっているかを明らかにするとともに、民俗的生活を総合的に把握しようとしたものである。そのために幾つかの視点からテーマを設定してみた。それらは自然環境や地域環境、あるいは社会環境などに注目したものや、信仰に注目したもののほか、現代において民俗がどのように変化し、あるいは機能しているかに注目したものである。市域の民俗的生活をできるだけ実態に即して総合的に把握しようとしたのである。
ただそのために、ヤマ(山)・マチ(町)・ムラ(村)・タイラ(平)・テエラ(平)・ザイ(在)・サト(里)などということばを用いて説明することが多くなった。これらは地形的・地域的な状況を示すだけではなく、生活環境をも示すものである。したがって片仮名表記すべきものであるが読みやすくするために、本文中ではできるだけ漢字表記を用いることにした。また、民間伝承を示すいわゆる民俗語彙(ごい)も、漢字表記にしにくいもの、あるいは漢字に直すと意味が混乱してしまうものは片仮名表記にしたが、それらを除いては漢字表記にした。いずれも読みやすさを重視したためであるが、それでも論文調の目立つ部分がある。しかしそれは、長野市域の民俗的生活をできるだけ実態に即して記述しようと努めた結果である。