民間伝承は、世代を超えて伝達・継承されてきた民衆の知恵であり、文化である。そうした現在の民俗文化も前代に連続する。そしてその前代の民俗文化もまたその前代の民俗文化と連続する。そのため、現在の民俗文化のあり方を明らかにしようとすると、しだいに過去に関心を向けることになる。
しかし、現在の民俗文化もまたつぎの時代になんらかの形で連続する性格を秘めている。したがって民間伝承を過去のものとしてみるだけではなく、現在とかかわり、また未来にかかわるものとして把握し記述しようとした。それこそが民間伝承を生きたものとしてとらえ、今まさに生まれでようとするものとみる視点を生かすことであると思ったからである。