屋根を茅(かや)や藁(わら)で葺(ふ)いていたころには、家の新築をフシン(普請)というのがふつうで、ほかには建て直し、作り替え、建て替えなどという。全体を作り替えるのでなく一部の増築の場合にも普請といい、屋根の葺き替えも普請という。また、中沢では普請は修繕程度の場合に使い、新築の場合にはタテマエという。十二(じゅうに)(篠ノ井有旅(うたび))、松代中町では大工や職人の手を必要とする範囲のことを普請というようにやや大掛かりな造作をさすが、普請ということばが広く用いられていることがわかる。これが一般に修理・補修をさすために、さらに限定することばを始めにつけて、増築をタテマシブシン、屋根の葺き替えをヤネブシン、壁の塗り替えをカベブシンといい、さらに家以外に範囲を広げて道路の補修をミチブシン、せぎの補修をセギブシンという言い方もしている。こうした普請とそれをおこなう場所を示すことばをつける言い方がほとんどであるが、戸部では修理することを一般にハソンという。改築には用いず、増築と屋根の葺き替えにはハソンといい、足袋(たび)の修理などにもそういった。
建物の位置を決めるために特別に行事をおこなうことはない。暦や鬼門との関係によって家の方角を決め、さらに出入り口、囲炉裏の位置には気を使った。易者などの専門家に見てもらうことも多い。古森沢ではコウジンサマのいる方角を避けるようにし、どうしても避けられない場合にはコウジンサマの遊びに出掛けるときに作ってしまう。あるいは猿田彦をまつって作ればよいともいわれる。桜枝町のように密集した市街地では、改築するにしても、前にあった柱と同じ位置に立てざるをえないケースもある。地鎮祭はヤタテ、ジマツリともいわれ、吉日を選んで鬼門の方向に鬼門柱をたて、敷地の中央に竹を四本立てて祭壇を設け、神主や僧侶(そうりょ)がお祓(はら)いをする。これがすむと屋敷引きといって地ならしをして基礎を作りにかかる。