基礎で重要なのは地づきで、これをドウヅキという。やりかたはどこも同じで、ドウヅキキネで土台石を置くところをつき固めるものである。ドウヅキキネは小さなものは二人から六人でつくものから、大きなものになるとやぐらを組んで一六人から二〇人ほどで引き綱をひくヤグラドウヅキまであった。そのさいにドウヅキウタを歌い、調子を合わせていた。歌は「この屋形はめでたい屋形。三世を固めれば百歳千歳までも動かない。よいさのさんよーえー」「この屋形はめでたい屋形。よーいよい。鶴と亀とが舞い遊ぶ。よいさのさーんよい」などで、中心棒を操る人や職人、古老の声のよいものが歌っていた。
大安を選んで棟上げの祝いをする。大工の棟梁(とうりょう)が御幣を切り、飾り物を用意して棟のところに家の主人と職人らがのぼって祓(はら)い、四方に酒をまくなどしてから餅をまく。餅のことをグシモチといい、長方形に切ったもので、かつては穴あき銭といっしょにまいた。現在はキャラメルなどといっしょにまいている。親類と組の人びとなどを招いて職人といっしょに祝宴をおこなう。祝儀は明治期のころは三〇尋(ひろ)(四、五十メートル)くらいの縄であったが、その後は金銭に変わっている。この祝いに神主が加わるところはない。