女性の場合、長着を着て半幅帯を締め、着物の裾(すそ)をシッパサミにしてお腰(腰巻き)を出していた。犬石(篠ノ井有旅)などでは家織りの縞(しま)の木綿で仕立てる家が多かったが、絣(かすり)を用いて仕立てたというところも多い。袖(そで)は元禄袖にし、作業をするときにはたすきを掛けて袖が邪魔にならないようにした。たすきは赤っぽいはなやかな色のものを使うとか、地味な色目のものを使うなど年齢によって使い分けた。着物の上には前掛けをしたが、木綿地の縞や絣などの着物の残り切れなどを用いて作ったものが多かった。長さは二尺(約六〇センチメートル)くらいのもので、野良に出るときにも家のなかで仕事をするときにも用いたが、モンペが出回ってからはしだいに前掛けをしなくなった。
着物はシッパサミをして短めに着ているために、足がお腰の下からのぞいていて、そのままで野良に出たのでは虫に刺されたり、蛇にかまれたり、草木で傷つけたりする恐れがある。そのため、野良に出るときには膝(ひざ)から下に紺木綿などで仕立てたハバキを巻いた。紺木綿はまむしなどの蛇をよけるといわれ、紺ハバキなどともよんだ。同じように腕も、たすきによってかなり上のほうまで出ているために、テッコウ・エガケなどとよぶ腕をおおう布製の筒のようなおおいを用いた。テッコウはその名のとおり手の甲からひじまでをおおうものであり、エガケは手首からひじまでをおおうものである。男女ともに用いたが、どちらかといえばテッコウは女性が多く用い、エガケは男性が多く用いた。
女性は髪の毛をうしろでくるくる丸めてとめつけ、手ぬぐいをあねさんかぶりにしたうえにスゲガサをかぶった。少しハイカラな人になるとスゲガサではなく、いぐさで編んだアミガサをかぶった。またマンジュウガサとよぶ少し深めの笠もあった。栗田のように、天気のいい日にはアミガサを用い、天気の悪い日や麦たたきのような作業のときにはマンジュウガサを用いたというふうに、作業内容によって使い分けているところもみられる。また、第二次世界大戦後は手ぬぐいを二本用いたかぶり方が一般的で(写真1-9)、その上に近年は布製の帽子をかぶる。手ぬぐいはつねに用いるもので、かなりの量が使われるが、犬石では嫁入りのときに手ぬぐい生地を一反(一〇本の手ぬぐいがとれる)はもってくるのが一般的であったという。