おかず

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秋や冬場はねぎやごぼうなどの根菜類を使って油味噌やキンピラ、フトニ(ごほうを太いまま煮たもの)を作ったり、煮豆などを食べる。また、大根はこの季節のおかず作りには欠かせないものである。ふろふき大根以外にも、じゃがいも・にんじん・ごほうと炊き合わせにしたり、鮭(さけ)や鱒(ます)の頭、あるいは油揚げ・ちくわ・さつまあげと煮つけたり、にんじん・ちくわ・こんにゃくや油揚げ、いたつけ、豆腐、はんぺん、里芋などとともに煮物にする。大根・にんじん・豆腐・ごほう・里芋を入れケンチン汁を作ることもある。また、大根・こんにゃく・ちくわ・にんじん・油揚げ・ごほう・里芋・大豆などを個別に煮て、蓋つきの塗り物に合わせ盛るツブツブ(オオビラ)とよばれている煮物を祝儀や不祝儀に作るが、簡略化した日常的に作る煮物をツブツブとよぶこともある。このほかに、おでんもしばしば作る。里芋ににんじん・こんにゃく・ちくわ・しいたけを煮こんで作ることが多い。また、かぼちゃの煮ころばしや、きのことシミドウフ(凍み豆腐)の煮物も季節を感じさせる。この時期の朝食には納豆もしばしば登場する。野菜類の多くは自給用として作ったものである。

 寒さがきびしい冬のあいだも新鮮な野菜が食べられるように、人びとはさまざまな知恵をめぐらした。多くの地域で、畑に穴を掘り大根やにんじん・いも類を入れて土をかぶせ藁(わら)をかけたり筵(むしろ)をかぶせムロを作った。屋内の土間(どま)に穴を掘ってムロを作ることもあった。また、ねぎ類は緑の部分を出して土の中に埋めたり、干して軒下に置いた。


写真1-18 冬囲い(長沼 平成8年)

 野菜や果物を干して保存する場合もある。野沢菜・大根・大根葉・里芋の茎・きのこ・くりはそのまま、柿とあんずは皮をむいて丸干しにする。さつまいも・りんご・かぶ・かぼちゃ・大根・夕顔(かんぴょうにした残りのしんの部分)は切ってから干す。わらび・ぜんまいはゆでてあく抜きしてから干す。大根は輪切りにしてゆでたものを屋外に置き、凍らせては解かし、また凍らせるという工程を繰りかえし、かさかさになるまで干してシミダイコンにして保存することもある。これは煮物にしたり味噌漬けにしたりする。

 春から夏・秋にかけては、これらの自家用栽培された野菜に、菜園から取れたてのなすをはじめとする新鮮な野菜を加え、煮物や油味噌、ふかしなす、丸なすのしん焼きなどを作りおかずにする。この季節には野山から採ってきた食材も豊富に使われる。ふきやたけのこ(孟宗竹(もうそうちく)ではなく、細い根曲がり竹)のほかに、うど・たらの芽・さんしょう・ふきのとう・わらび・ぜんまい・よもぎ・せり・のびる・くるみなどが煮つけやあえ物、ふき味噌などに姿を変え家族を喜ばせる。

 秋の味覚としては、きのこやくりがあげられる。きのこ類でとくに多いのは、しめじやあみたけ・じごぼう・松茸(まつたけ)・あかんぼなどである。きのこやくりは、きのこ御飯やくり御飯に使う。以前はこれ以外にあかざやスベリショ(すべりひゅ)などさまざまな野草を採ってきてごまよごしやおひたしにして食べた。

 現在は、各地にスーパー・マーケットができているが、それ以前は海産物の多くは越後産や北海道産のもので行商人や商店から買っていた。鮭(さけ)・鱒(ます)・にしん・たら・昆布・いわし・さば・さんま・いかなどを食べた。鰤(ぶり)やさめ・かじき・飛(と)び魚(うお)・干鱈(ひだら)・ごまめ・貝などを食べることもあった。わかめや昆布、削り節なども買って使ったり、海藻であるエゴを鍋(なべ)に入れて煮溶かしてから器で固めたものを長方形に切り、からし醤油(じょうゆ)につけて食べることもあった。また、千曲川やその支流でふな・はや(うぐい)・こい・なまずなどを釣って食べた。鶏やうさぎを飼って食べたりもしたが、戸部や柴では兎唇(としん)になるといってうさぎを食べることを嫌がった。このほかに馬や牛、きじや山鳥などの肉も食べた。

 特色あるたべものとしてはつぎのようなものがある。まず、地ばち・くまばち・すずめばちなどのはちの子を炒(い)ったり煮たりして砂糖醤油で味付けしたり、油炒(いた)めしてから醤油で味付けし御飯に入れて炊いてはちの子飯にした。また、いなごは水洗いしフライパンや鍋で炒り、砂糖醤油、油、塩で味付けしたり、つくだ煮にすることもあった。田んぼで捕ったたにしは、砂糖醤油で煮つけたり味噌汁のなかに入れたり、黒豆とともに煮たりして食べた。蚕のさなぎは油で炒り砂糖醤油で味付けしたり、唐揚げにして醤油をつけて食べたりした。縞(しま)蛇、まむし、青大将などの蛇を、皮を剥(は)いで焼いて食べた。沢蟹(さわがに)は炒めてから醤油で味を付けた。赤がえる・ひきがえるは皮を剥いで砂糖醤油のつけ焼きにした。かたつむりも砂糖醤油でつけ焼きにした。