麻の仲買

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芋井、七二会(なにあい)、上水内郡戸隠・柵(しがらみ)(戸隠村)、鬼無里(きなさ)村などは麻の産地で、麻を作って畳糸に加工して、桜枝町にある麻問屋に売った。麻問屋では畳糸を作る冬に産地へ出掛け、農家を回って買いつけて歩いたが、そのほかに仲買も頼んで買いあつめた。仲買にはふだんは百姓をしている地元のまじめな人を頼んだ。畳糸は、細い糸を六〇〇シズ(本)を二四束ねてイッソクという。この一〇ソク分ぐらいのお金をあらかじめ渡しておき、農家から買ってもらった。仲買人には買いあつめた量に応じて、手数料を支払うのである。仲買人は実際に畳糸を見て値段を付け、山から長野の町へ通ってくるダチンツケという馬方に頼んだり、自分でかついだりして畳糸を麻屋に運んだ。

 畳糸を作らない夏場でも、仲買人は麻屋とともに農家を回った。というのは、経済的に余裕のある農家では、一冬に作った畳糸を全部売ってしまわず、土蔵のはめ板の中にしまっておいて、値段のあがる夏に売ったからである。仲買人は地元の人だし、近所で聞けばどこの家に畳糸があるかはすぐわかったという。