縁日(えんにち)とはある神仏に特別な縁のある日で、祭りや供養がおこなわれ、この日にその神仏がまつられている寺社に参詣すれば、大きな功徳(くどく)があるとされ、参詣客でにぎわう。そこで、その参詣客をめあてに縁起物などの店が出て、これがまたにぎわった。
市域には参詣客が多いいくつかの縁日があるが、それを開催日の順にあげると、つぎのようになる。一月六日には川中島町戸部の大神宮さんでオタヤサンという縁日がある。これは、北信の三大祭りともいわれ、出店が百軒近くも並んで、だるま・福あめ・縁起物・おもちや・破魔矢(はまや)・雑貨などが売られる。夜中の二時から三時ぐらいまでがにぎやかで、昔は西山からも大勢やってきた。夜明けごろにはほとんど終わって帰っていった。今は午前中いっぱいやっているが、昔ほどにぎやかではない。この日は米を集めて糀(こうじ)を買い、甘酒を作って参詣客にふるまった。同じオタヤとよぶ縁日が、上高井郡小布施町の大神宮さんでも一月の十四、十五日にあり、赤沼からも出かけていった。今は安市(やすいち)といって、小布施町中の商店で安売りをしている。さらに、一月十七日と十八日には、篠ノ井岡田の観照寺大日堂の縁日でシチカンヤといい、福あめなどを売った。
四月になると、安茂里のお観音様の縁日が十八日にあり、昭和三十年(一九五五)ごろまでは農具や菓子類、植木などが売られた。また、二十日ごろの初めての丑(うし)の日に、信更町三水で仁王様の初丑(はつうし)という縁日があり、日用品・雑貨・菓子・縁起物などを売った。長沼西厳寺(さいごんじ)の縁日は二十五日にあり、境内ではあめ・せんべい・みかん・バナナ・金魚などのほかに、農具、野菜の種物、苗木などが売られて、多くの人びとが集まる。
五月には、五日(以前は八日)に若槻東条の蚊里田(かりた)八幡宮でカリタサンという祭りがあり、農具やこどもの菓子、夏みかん、金魚、野菜の種、植木などが売られる。
七月には各地で祇園(ぎおん)がある。上西之門町の弥栄(やさか)神社では祇園とも御祭礼ともいって、七月七日から十四日まで、旧善光寺町はさまざまな催しがあり、近在からの買物客でにぎわう。ことに十二日には、いくつかの屋台が出て町内を巡行するので見物客が集まる。篠ノ井では第三土・日曜日に祇園がある。また、松代町中町では、二十日直前の土・日曜日が祇園である。
八月になると、いずれも九日に四万八千日という観音様の縁日が各地にある。中御所の観音堂の四万八千日では、この日の夜はウリコロガ(バ)シといって、すいかやまくわうりなどの瓜類を売るのが特色で、そのほかには雑貨・日用品・氷水・家具や盆の必需品などが売られている。北長池(朝陽)の十二の観音様の四万八千日では、氷水やすいか、農具などが売られるが、今は農協でおこなっている。また、上水内郡豊野町の観音堂(観音寺)でも四万八千日があり、赤沼からも出かけていく。あめ・せんべい・野菜・果物・金魚・花火・おもちゃ・植木などが売られている。四万八千日ではないが、松代町大信寺では二十三日、二十四日におかんてんさんという縁日があり、すいか・まくわうり・植木・おもちゃなどが売られて、近在の人びとの参詣でにぎわう。川中島町原の蓮香寺呑龍(れんこうじどんりゅう)様の縁日は四月八日・九日と八月八日で、蚕種(さんしゅ)・あめ・すいか・まくわうりなどが売られた。