かつての農家は、農産物を売る以外に現金収入の道はなかった。月々現金が入るわけではないから、物を買っても現金で支払うことはむずかしい。そこで、当座は帳面へ付けておいて、あとでまとめて支払う掛け買いが一般的におこなわれていた。掛け買いされたものは、食料品では酒・魚・しょう油・油・砂糖・菓子・雑穀・りんご・小麦粉など、農業用品では肥料・農具・養蚕道具・種苗類など、そのほかには衣類・雑貨・婚礼用品などであった。
付けておいた借金を精算したのは盆と暮れで、北信全域で遅いところでは昭和二十年代ごろまでおこなわれていた。その後、月末勘定からさらに現金買いへと変わってきた。盆と暮れ以外では、蚕あがりに決済したとするところも多い。また、米と麦のトレアキとするところもわずかにみられる。