畦畔(けいはん)をアゼとドテに区別していることが多い。とくに水田耕地に傾斜のある場合には、畦畔にはかならずアゼとドテの部分ができる。まったく平らなところにはドテはなく、アゼだけになる。
アゼの整備は、水入れ前の重要な作業である。手間と時間をかけ、じつにていねいにおこなわれる。とくに傾斜地にある水田は、水もちをよくするためにアゼの整備は不可欠の作業であるといってよい。
アゼヌリは春一番の仕事であるとされる。雪が消えるとすぐにアゼヌリの準備に取りかかる。まず、前年に塗った土をはがす。これをアゼッケズリという。アゼの上側(平らな部分)は鍬(くわ)を用いてはがし、アゼの内側(斜めの部分)は鋤(すき)ですいてはがす。
また、アゼ際の土をひと鋤起こす。起こした土をミツマタ(三本鍬)で砕き、さらにクレンヅチ(クレハタキ)ではたいてこまかくする。これをアゼグレという。アゼツチはとくにこまかくしておく必要がある。そうしないと、アゼヌリがしずらいだけでなく、アゼの保水力が悪くなる。そのため、アゼグレを一番グレ・二番グレというように二度に分けてよりていねいにおこなうこともある。こうしたアゼグレの作業は、目安として田のナカグレが終わるとおこなった。
土が十分こまかくなると、水を入れてアゼツチをこねる。アゼツチは軟らかすぎても固すぎてもよくないため、こねた土が落ち着き適当な固さになるのを待ってアゼに付けていく。こうしてアゼの形ができると、アゼを鋤の平らな部分を用いてたたいて固めていく。かなりきつい作業である。そうしてアゼをたたき終えると、鋤の平らな部分を斜めにアゼにあて、アゼの表面(アゼツチを塗ったところ)をこすっていく。そうしてあたかも壁土を塗ったかのように表面を滑らかに仕上げる。