山においても、谷間や山麓部の比較的平坦な土地を利用して田が作られていた。しかし、それは里のようになりわいの中心になることはなかった。耕地の多くは畑で、当然耕地全体に占める田の割合は少なかった。そうした畑や一部の田を利用して、米や麦のほかにもさまざまな穀物が栽培されてきた。
また、そうした耕地にたいして、山の面積ははるかに大きなものがあった。この山を利用して、林業のほかにも採集・狩猟などさまざまな方法でなりわいを立ててきた。
このように畑を中心とした耕地と山を利用してさまざまななりわいをおこなうところに、山村のなりわいの特徴がある。いいかえれば、いくつもの生業を組み合わせておこなうこと、里の村のように水田稲作といったひとつの生業に集中しないことにその主眼があったといえる。