山村では、麦や豆類のほかにも、そば・粟・稗・きびといった多様な雑穀が栽培されてきた。ともに自給的な作物である。
そばは、夏そばと秋そばの二回収穫できる。夏そばは、五月に蒔いて七月に収穫し、秋そばは八月に蒔いて十月に収穫する。ともに栽培期間は七〇日間ほどと短く、労力もあまりかからない。秋そばのほうが収量は多く、味もよいとされる。麺類として用いられるほか、コナモノとしてヤキモチなどにもされ、日常の食糧として重要であったが、昭和四十年代後半ごろからはあまり栽培されなくなった。
粟ときびはモチ種が主に作られた。こうした雑穀は、冷害や干ばつに強く、山間地で主として栽培されていた。そのうち粟は、かつては山間地だけでなく水不足に悩む平坦地でも広く栽培されていた。
また、稗は畑だけでなく、山間地の冷水が入る田の水口付近や、温水のための施設であるヌルメなどに栽培されることもあった。