山村生活では、山野に自生する動植物を採集することは、食料としての自給的な意味をもつとともに、その季節を代表する楽しみのひとつであった。現在でもそれは季節の風物詩として意識されている。
水田のあるところではたにしを拾うことができた。たにしは汁に入れたりして煮て食べた。また、乾燥させて保存することができ、凶作のときには貴重な救荒食糧となった。
秋になると、じばち(地蜂)などのハチノコ(蜂の子)を捕った。ハチノコは炒(い)りつけて食べた。
稲刈りのころになると、水田でいなごを捕った。朝早く朝露で羽が湿ってよく飛べないいなごを手づかみした。いなごは炒りつけて食べた。
山間に点在するため池では、ひしの実やジンサイ(じゅんさい)を採った。
山野では、わらび・ふき・すいこ・いたどり・たらのめ・みつば・のびる・うど・あかざ・すべりひゅ・くわの実・つばな・あけび・みずななどさまざまな山菜を採ることができた。また、栗・くるみといった木の実を拾うこともできた。
山にはまた、きのこが豊富であった。しもふり・きしめ・むらさき・あみたけ・じこぼう・くりたけ・はつたけ・おこんだけ・ねずみさし・まつたけ・からまつたけ・ゆきわりなどをはじめ、種類も豊富である。主として秋がきのこの旬(しゅん)であるが、ゆきわりのように春に採れるきのこもある。
このように食料として採集されるもののほかには、商品となる薪や、日常生活に必要な資材として用いられる竹や藤蔓(ふじづる)、また、牛馬の飼料や堆肥にするマグサやヒグサといったものを山野からは採集することができた。
こうした山野での採集活動は、一定の秩序をもっておこなわれてきた。多くの村では、ヤマノクチ(クチアケ)を待っておこなうことになっていた。薪や下草の採集はとくにそうした傾向が強い。