区・町内の役員

130 ~ 131

まとまりをもった地域社会としては、右にあげた三地区のような区や町内がもっとも基本的なもので、これは長野市域のどの地区にもみることができる。いずれも長い歴史のなかで統合を保ってきた地域社会であり、区や町内では地区運営の責任者が選任されている。

 先の田子では、区長、副区長、会計の三役が一年任期の役員であり、毎年正月十五日に区長が区の全戸に招集をかけて「役定め」をおこなっている。このときには三役以外の各種役員や、区のなかの組の組長、その補助をする伍長なども決める。現在、区長は推薦となっており、会計、副区長をつとめたあとに区長に就任するようになっているが、このかたちになる以前は選挙で決め、さらに戦前までは財産のある家が区長などの役員をつとめていたという。戦前までは一月二十日が役定めの日で、区長は二年任期でつとめ、しかも区長は正月には区の各戸をよんで酒などを出してふるまうのがならわしとなっていたので、財産のある大尽(だいじん)の家でないとつとまらなかったといわれている。区長など役員の決め方やそのあり方には変遷があるのである。


写真1-53 役定め(若槻田子 平成6年)

 松代の肴町では、正月十五日に役員の改選とお日待(ひまち)をおこなっている。順番につとめるお日待の宿に町内でまつる道祖神の祠(ほこら)が運ばれ、床の間に安置されてから午前中に役員会が開かれ、その後、総会となって決算や役員改選がおこなわれる。役員には区長、副区長、会計、隣組の組長、氏子総代などがあり、二年任期となっていて、区長は選挙で決め、他の諸役は六つの隣組から順番に出すようになっている。総会が終わると、お日待(ひまち)の宴席となり、さらに夕方にはドンドヤキがおこなわれて一日が終わっている。

 地区運営にあたる責任者は、市域では田子や肴町のように、区長というのが一般的で、全域にわたっているが、花立(はなたて)(更北小島田(おしまだ)町)では常会長、のちには自治会長というようになったといい、吉や太田(吉田)・塚本(若穂川田)では総代とよんでいた。役員の決め方は、市域では選挙で決めるところがもっとも多く、推薦・選考委員会をつくって候補者を決め、交渉して決める方式がこれに次いでいる。ほかにはカッパマワリとよぶ順回りで役にあたったり、話し合いで決めているところもある。

 役員の引き継ぎは、一月にというのが各地にあって、肴町のように十五日のお日待に決めてかわるというのは堀之内(更北真島町)や戸部(川中島町)でもおこなっている。一月以外では四月交替あるいは十二月交替などがあり、このうちの四月交替は平坦(へいたん)部の地区に広くみることができる。