以上のように区や町内では、さまざまな共有財産をもち、それを管理し利用してきたのであり、このことが区や町内の統合と維持に大きな意味をもっているのである。ただ、こうした共有財産をもつということは、当然ながらそこに権利・義務があるということで、とくに不動産の場合は、区や町内とは別に共有の権利をもつ家々で財産区を組織したり、土地の登記時点の居住者で共有の登記をおこない、その後の転入者や分家には権利がなかったり、一定の金額を区などに納入し、常会で決議されて共有に加わることができるという場合もある。共有財産の所有は地域社会の統合と維持に重要な役割をもつのであるが、その権利をめぐっては、さまざまな葛藤(かっとう)をはらみ、対立や争論を生むこともあった。
先にあげた千曲川河川敷に共有地をもって畑として割地をおこなっている北屋島では、三年以上居住して希望すれば割地を使える権利があるという。ここでは割地の場所が二ヵ所に分かれていて、五年ずつずらしてそれぞれを一〇年に一度ずつ割り替えをおこなっているので、新規の加入は五年ごとになっている。また、同じく河原に割地をもつ長谷では、一〇年に一度割り替えをおこない、旧来から住む家の分家は分家したあとの割り替え時に権利を得た。新来の家の場合は、のちには三年間居住し、区費を納入すればつぎの割り替えから仲間になれるようになったが、かつては一〇年居住しないと権利がもらえなかったと伝えている。