主婦の座

162 ~ 163

家長とともにイエを守っていくのが主婦である。イエのなかで嫁が主婦として認められる時期は、家長の相続と同時であるというところが多く、灰原(信更町)では家督譲りをしたその大晦日(おおみそか)におこなわれたという。また、家督の相続とは関係なく、姑(しゅうとめ)が高齢になったり病気になったときに譲るとするところも広くみられ、死に譲りといって姑が死亡すると譲るというところもある。そのほか、嫁が世間に出て重くみられるようになったと考えられるときに譲ったという戸部(とべ)(川中島町)の例や、自分のこどもがみなイエを出て片づいたときに譲ったという柴(松代町)の例、あるいは孫が一人前になったときに譲るという松代町中町の例もある。いつ主婦の座を譲るかはイエによって異なるが、いずれにせよ嫁に来てしばらくは譲られることはなかった。

 主婦の座を渡すことの呼び方としては、シャモジワタシ、あるいはシャクシワタシといわれるところが多く、ほかには、コメビツワタシといったり、「家計をまかす」とか「若いもんにやらせる」といった言い方もされている。そして主婦になるとみずからの裁量で家族の食物の管理などをおこなうことになる。ただ主婦の座を譲られてもしばらくは家庭経営に参加させられないこともしばしばあった。かつては、あくまでも主婦は家長権のもとにあったので、その権利は限定されたものであったが、主婦はイエの年中行事の儀礼食を作るなどして取りしきったり、地区の婦人会などの集まりに参加したりしてその役割を果たしてきた。