家督を譲ると親は隠居する。隠居には母屋(おもや)とは別に棟を設ける別居隠居の場合もあるが、多くは同じ家屋に隠居部屋を設ける同居隠居である。別居する隠居は、南長池や赤沼・古森沢などにみられ屋敷内にエンキョヤ(隠居屋)を作る家があったという。隠居屋を作るのは親子の仲が悪いとか、財産家である場合など特別な理由のある場合である。隠居するときには生活用品などのほかに、田畑山林・位牌などや未婚の女子などのこどもを連れて出ることもあった。財産やこどもを連れて隠居した場合は、家計も別にして一つのイエとして独立し、こどもが嫁や婿をもらってイエを継いだ。こうした隠居はインキョベッケ(隠居別家)ともよばれた。
同居隠居の場合は、屋内に隠居の居場所として専用の部屋を作る。この部屋を桜枝町・古森沢・東横田などでは「隠居部屋」とよび、太田では「隠居所」、南長池では「小部屋」などとよんでいる。