分家を出すことによって本家・分家の関係にある家が増えていく。本家と分家、さらに孫分家というように互いに家系を認識しあい、先祖を同じくすると意識されている集団を、冒頭でもみたように、ウチワとかマキ・マケとかとよんでいる。
ウチワとよぶ地区は北屋島(朝陽)・南長池・栗田・小市・岩崎(若穂綿内)・塚本(若穂川田)・堀之内・花立(はなたて)(更北小島田(おしまだ)町)・古森沢・瀬原田(篠ノ井)・東横田・岡田(篠ノ井)・柴・赤柴などである。いっぽうマキ・マケとよぶのは吉・太田・桜枝町・南長池・塚本・四ッ屋(川中島町)・十二(じゅうに)(篠ノ井有旅)・犬石(同)・長谷などである。いずれの呼称も広く用いられていることがわかる。また同じ地区のなかでも両者の呼称がなされていることもある。その他、綱島(青木島)などでドウセイとよばれ、栗田ではドウケ、灰原ではイッケとよばれている。またウチワやマキとよばれている地区でも、イチソク(一族)といわれることもある。
ウチワは本・分家関係だけでなく、篠ノ井岡田のようにオヤブン・コブンの関係を含むとするところもある。また、犬石では本家や分家などの関係をマキというが、親分・子分や親戚などの関係をウチワといっている。芋井広瀬では血縁を意識した本・分家の集団をマキといい、血縁を意識しないが冠婚葬祭で互いに手伝いあう間柄をウチワといっている。ウチワはミウチということもある。安茂里の久保寺では姓を同じくする集団をマキといい、マキのなかでも小地域内で比較的系譜のはっきりした小集団をウチワといっている。十二では本・分家集団としてのウチワと、外ウチワがある。外ウチワは同姓ではないが、手伝いなどをしあう親しい間柄をいう。
各地区で親戚とか親類とかという関係も聞かれるが、これらは婚姻関係によって成立した家々の関係であって、数代つづくこともあるが、永続的なものではない。それにたいしマケやウチワなどの本・分家集団は、世代がかわっても半永続的に集団を構成する家は継続される。ただし分家を出すことによって増えることもあり、また、絶家や遠方への移転により集団から消えていくこともしばしばみられる。