寺と檀家

173 ~ 174

本・分家集団は血縁関係があるとされ、姓を同じくするのが基本である。先祖供養をになう檀那寺(だんなでら)も本家と分家は同じくするということが当然とされている。それゆえ檀那寺の行事も本・分家集団が顔を合わせる機会となる。檀那寺が遠い場合、盆などにおこなわれる施餓鬼会(せがきえ)にマキやウチワが集まって車で出かけたりすることもある。

 しかし、本・分家関係であっても檀那寺が異なる場合もある。たとえば山千寺(さんせんじ)(若槻)のBマケでは、本家が曹洞宗の信叟(しんそう)寺、分家は浄土真宗の浄泉寺を檀那寺としている。それは分家をするときに嫁方の檀那寺に変わったとされ、「寺を持って嫁入りした」からとされている。また、田子でもCマケは曹洞宗寺院の檀家と、浄土真宗の門徒に分かれている。また同じく田子のDマケでも、五軒のうち三軒が浄土真宗で、他は禅宗だという。同じ宗派の家々は直接的な本・分家の関係があり、マケのなかでも宗派によって系統化されている。なお、田子のEマケはもとは曹洞宗の檀家であったが、ある時代に浄土真宗の門徒に変わったという。このことも「嫁が寺を持ってきた」からとされている。ある時代に、浄土真宗の家から嫁入りするときに、婚家の宗派がかわることがあったということになり、その後分家を出すと本・分家集団内の宗派が分かれることとなる。

 以上は特別な宗派がかかわることによって、本・分家集団内の檀那寺が分かれてしまった例であるが、そういったことがない限り同じ寺にかかわることになる。そしてマキやウチワを代表する形で本家が檀家総代となり、寺院運営をおこなっているということもしばしばみられる。