戸隠講

191 ~ 192

県内の神社を対象とするものでもっとも代表的なものの一つが、戸隠神社を対象とする戸隠講である。中社か宝光社を対象とするものであるが、戸隠講はほぼ市域全域にみられる。ただ桜枝町などのような古くからの商業地には希薄である。それは、戸隠神社にたいする信仰が、水や作物など農業にかかわるものであったからであろう。広瀬では戸隠さんは作神さんであるといい、全戸が戸隠講に加入している。このように今でも全戸加入のところがみられるが、昔はそうであったが、現在は希望者だけになってしまったというところが多い。

 花立では農家の講中から順番に代参にたったといい、講員一人当たり白米五合ほどを集めて代参した。また、東横田では中社の講と宝光社の講とがあって、村の人はいずれかの講員になっていたという。上石川では四つの戸隠講があり、中沢では老人のほとんどがかつてはどこかの講員になっていた。

 代参人の選出は、堀之内のように抽選をするところもあるが、赤沼や花立のように順番につとめるところもある。それも古森沢のように、男女や年齢を問わないとするところもあった。それぞれの講には世話をする御師(おし)がいて宿泊などの世話もした。田子ではだいたい大祓(おおはらい)の前の十二月二十五、二十六日ごろにおこなったが、御師の坊に泊まったときにそばが出され、それを食べるのが楽しみであったという。

 代参すると奥社までお参りに行くことが多い。御師の手配によって神楽が上がり、その後戸隠神社祈祷之璽(きとうのじ)と戸隠神社神札・御神籤(おみくじ)をいただいて帰り講員に配った。御神籤には人事に関するものと作柄に関するものとがあり、「戸隠さんのお判じ」といって生活や農作業をするうえで大切にした。生活に密着した代参であった。

 戸隠神社の側からも村々を訪れることがある。戸部では毎年春になると、戸隠から御師がお札をもってきて講員のところを回るというが、これもまた人びとの生活との関係が深いことを示すものである。