埼玉県秩父にある三峯(みつみね)神社は、防火と盗賊よけの神として信仰されている。その信仰は代参講としての三峯講によって地域の人びとによって支えられている。三峯神社からはお札を受けてきたり、御眷属(ごけんぞく)とかオイヌサマなどともよばれる山犬を箱に入れて受けてきたりする。オイヌサマの姿は見えないが、お札を入れる箱と同じくらいの小さい箱のなかにいるといい、息づかいやうなり声が聞こえるなどともいう。古森沢では五月ごろに二人で代参してお札を受けてきて配るというが、桜枝町では三年に一度ぐらい代参するだけであったという。市街地においても盗賊よけの必要はありながら、その集団が組織されているところはそれほど多くはない。
このほか、火災よけとして信仰される静岡県の秋葉(あきば)神社を対象とする秋葉講や、作神として信仰される栃木県の古峰(こみね)神社を対象とする古峰講などがある。このようなものは生業と結びついたりして、地域社会における生活の維持と深くかかわりながら、社会組織として恒常的に存在する傾向をもっている。同時に、日常の生活から離れて社寺に参詣する旅は、一種の娯楽としての性格ももっている。
桜枝町には、茨城県の笠間(かさま)稲荷と愛知県の豊川(とよかわ)稲荷の講があるが、これは講員が全員で参詣するものであるから代参講ではない。町の人びとが任意にそのつど参加するものである。参詣する前に講が結成されるのである。笠間稲荷には五月八日、豊川稲荷には三月にそれぞれ参詣する。富をもたらす神に商人が参詣することは自然な行為であるが、講のありかたからすると、旅を楽しもうとする性格のかなり強いものということができる。