年取りの晩はどこの家でも年取り魚を買ったりして、年に一度のごちそうをして年取りをする。年神棚をはじめ神棚や床の間、えびす・大黒、天神、オオマツサマなどに、新しく炊いた御飯を供える。御飯はお椀(わん)や御飯茶碗(ちゃわん)、小皿、重箱などに盛るが、なかには年神様専用のオハチなどとよぶ器(うつわ)に盛るところもある。年取り魚は東・北信の場合鮭(さけ)が多いといわれるが、鰤(ぶり)や鱒(ます)、いわしなどと家によってさまざまな魚を年取り魚としていて、特定の魚だけを供え物にしているところは少ない。供える場合は切り身にしたり、頭や尻尾(しっぽ)の部分などを供える。岡のように、オエベッサンだけには魚の頭を供え、ほかの神様には切り身の部分を供えたりするというところもある。また、ごまめ(田作り)、干し子、するめなどといったものも年取り魚として供えられてきた。
とくに年取りの晩には特別な供え物として、オミタマなどとよぶ山盛りにした御飯や、にぎり飯に箸(はし)を立てた供え物を上げるところも善光寺平などにはみられた。家によっても異なるが、長谷では山盛りにした御飯のお椀に、折った白箸を一〇本から一二本さして供えた。上石川(篠ノ井石川)では、昭和初期までは重箱に一升飯を山盛りに盛り、檜箸を月の数の一二膳立てて供えた。また古森沢では昭和四十年ころまで、オミタマとよぶ三方に盛った御飯に檜(ひのき)箸を立てて供えたという。箸の数は平年で一二膳、閏(うるう)年には一三膳も立てたので、御飯を食べに出てきたねずみに倒されることがあって困ったという。