物作り

212 ~ 213

一月十四日から十五日にかけておこなわれる小正月の行事は、農作物の豊作を願うものが多く、年の始めに豊作を願うモノツクリ(物作り)などをした。こうした、年の始めにあたって豊作を祈る行事を予祝(よしゅく)行事という。

 小正月の飾り物はモノツクリなどとよび、米の粉を蒸して作った稲の穂や綿のつぼみ、繭玉、野菜の形をしたものを茶の間や人が多く集まる居間などに飾った。これは、具体的に豊作を願う作物名などの名称をつけて、イネノハナとかモメンダマ、マユダマなどともよんだ。なすやきゅうり・かぼちゃ・ささげなどの野菜の形にしたり、馬や鍬(くわ)、臼(うす)などの形をした団子も作って飾った。それらを飾る木は川端から採ってきた柳の枝が多いが、ぐみ、けやき、エノミ、竹などの枝にさす場合もみられた。

 中沢(篠ノ井東福寺)では、米の粉を二、三升使ってマユダマ、モメンダマのほか野菜の形をした団子を作ってエノミの木にさし、家のものがいつもいる居間の隅に、天井まで届くような大きなモノツクリを作って飾ったという。

 イネノハナの場合は米の粉ではなくて小正月に餅をついて作ることが多く、稲わらの皮を取り去った上部の茎であるミゴや柳の枝に、まだやわらかい餅を巻きつけるようにしてつけて、稲花として飾った。

 飾り物の団子を食べると一年中病気にかからないとか風邪をひかないとかといい、十五日のドンドヤキにだるまなどのお飾りといっしょにもっていって焼いて食べた。また家でも煮たり焼いたりして、お茶やこどものおやつ代わりとして食べたし二十日正月の夜に御飯のなかに入れたり、大田植えのときに食べたりもした。モノツクリに飾った木の枝は、いつまでも飾っておくと厄病神がつくといわれて早くはずした。