正月十五日早朝には、農作物に害を及ぼすものを追い払うモグラオイをした。多くはもぐらであったが、鳥や蛇、むかでを追い払うというところもみられた。
こどもたちは朝早くに家の周りや田のなかを「モグラホイ モグラホイ ヘビモ ムカデモ ヤマイケ ホイ」などと歌いながら、ぬるでの木で作った杵(きね)や槌(つち)で地面をたたいたり引きずり回したりしてもぐら追いをした。遅くにやると村中のもぐらが自分の屋敷に追いこまれてしまうといって、競争で朝早くにやった。
岩野(松代町)では大正年間まで、二〇歳前の男性が杵で屋敷まわりをたたき、もぐらがいやがるというのでコイオケ(肥桶)の縁を天秤棒(てんびんぼう)でこすってキーキーといういやな音をさせた。古森沢(川中島)では昭和十五年(一九四〇)ころまで歌いながら肥桶の縁を天秤棒でこすり、同じようにいやな音を立ててもぐらを追った。桶は古いほうがよいとされ、天秤棒はかしの堅いものがよいといった。大きな杵をもって家のまわりを打って歩く家もあり、地響きがするほどの大きな音をたてて追っていた。