立春の前日は節分で、豆まきをする。夕飯前に煎(い)った大豆を一升ますに入れて茶の間や座敷などの部屋を回り、「オニハソト フクハウチ」と大声でいいながら豆まきをする。主人がまいたりこどもが中心となってまいたりするが、親が豆まきをするあとからこどもがすりこぎ棒をもってついて回るところもみられる。古森沢では一升ますに入れた豆をえびす様をまつる神棚に供えてから、裃(かみしも)を着た主人が大声をあげて豆まきをする。そのあとを、すりこぎをもったこどもが「ゴモットモ ゴモットモ」といいながらついて歩いた。外に向かってまいたあとはすばやく戸を閉め、他家から追いだされた鬼が自分の家に入ってこないようにした。
豆まきがすむと、その年の占いをする。ひとつかみで自分の年齢の数だけ豆をつかめれば、今年はよいことがあるとか、厄を逃れられるとかという。また、まいた豆を暗がりのなかで年の数だけ拾って四辻(よつつじ)に捨ててくると厄を逃れられるとか、まいた豆をいろりのカギツケなどにつるしておいて初雷が鳴ったときに食べると、雷が落ちないともいわれた。この日に、流行病の侵入を防ぐために魚の頭を戸口にさしたというところも、わずかではあるがみられる。